管理費から自治会費を支払うことができますか

管理組合が自治会費を強制的に徴収することも、管理費から自治会費を支払うこともできません。

以下、管理組合と自治会の違いをふまえて説明します。

特に断りのない限り、条文の番号は区分所有法のもの、「規約」は「標準管理規約単棟型」を意味します。

管理組合と自治会の違い

マンションの管理組合は、建物・敷地・附属施設の管理を行う団体です(3条)。

マンションの所有者は当然に管理組合の構成員になり、管理組合に加入しないことや脱退することはできません。

これに対し、自治会(町内会)は、会員相互の親ぼくを図り、快適な環境の維持管理、共同の利害に対処、会員相互の福祉・助け合いなどを行う団体です。

自治会には加入しないことや脱退することもできます。

この点、県営住宅の入居者によって構成される自治会の会員が自治会に対して退会の申し入れをした事案において、自治会の会員は、いつでも自治会に対する一方的意思表示により自治会を退会することができるとした裁判例があります(最高裁平成17年4月26日)。

▶最高裁平成17年4月26日

被上告人【自治会】は、会員相互の親ぼくを図ること、快適な環境の維持管理及び共同の利害に対処すること、会員相互の福祉・助け合いを行うことを目的として設立された権利能力のない社団であり、いわゆる強制加入団体でもなく、その規約において会員の退会を制限する規定を設けていないのであるから、被上告人の会員は、いつでも被上告人に対する一方的意思表示により被上告人を退会することができると解するのが相当であり、本件退会の申入れは有効である…。

このように、マンションの管理組合と自治会とは別の団体であり、マンションの所有者は当然に自治会の構成員になるわけではありません。

もっとも、組合員と自治会の会員が重なることも多く、両者が明確に区別されていないため、以下のような事項が問題となることがあります。

  • 管理組合が自治会費を徴収できるか
  • 管理費から自治会費を支払うことができるか

以下、それぞれについて説明します。

管理組合が自治会費を徴収できるか

管理組合が、管理費とともに自治会費を強制的に徴収することはできません。

この点、管理組合が、町内会費を管理費に含めて徴収することを規約で定めても拘束力はなく、町内会費を請求できないとした裁判例があります(東京簡裁平成19年8月7日)。

▶東京簡裁平成19年8月7日

⑴ 町内会は、自治会とも言われ、一定地域に居住する住民等を会員として、会員相互の親睦を図り、会員福祉の増進に努力し、関係官公署各種団体との協力推進等を行うことを目的として設立された任意の団体であり、会員の自発的意思による活動を通して、会員相互の交流、ゴミ等のリサイクル活動及び当該地域の活性化等に多くの成果をもたらしているところである。
そして、町内会は、法律により法人格を取得する方法もあるが、多くの場合、権利能力なき社団としての実態を有している。
このような町内会の目的・実態からすると、一定地域に居住していない者は入会する資格がないと解すべきではなく、一定地域に不動産を所有する個人等(企業を含む)であれば、その居住の有無を問わず、入会することができる…。
そして、前記目的・実態からすると、町内会へ入会するかどうかは個人等の任意によるべきであり、一旦入会した個人等も、町内会の規約等において退会の制限を定める等の特段の事由がない限り、自由に退会の意思表示をすることができる…。

⑵ ところで、区分所有法第3条、第30条第1項によると、原告のようなマンション管理組合は、区分所有の対象となる建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うために設置されるのであるから、同組合における多数決による決議は、その目的内の事項に限って、その効力を認めることができる…。
しかし、町内会費の徴収は、共有財産の管理に関する事項ではなく、区分所有法第3条の目的外の事項であるから、マンション管理組合において多数決で決定したり、規約等で定めても、その拘束力はない…。
本件では、原告の規約や議事録によると、管理組合費は月額500円となっており、親和会当時からの経緯によると、そのうちの100円は実質的に町内会費相当分としての徴収の趣旨であり、この町内会費相当分の徴収をマンション管理組合の規約等で定めてもその拘束力はない…。

⑶ 原告は、町内会の存在によって被告は一定の恩恵を受けるのであり、町内会費が月額100円という金額からすると、町内会への加入は不可欠であり、合理性もあることから、規約等に管理組合費の定めがあることを根拠として、町内会費の請求をすることができる旨の主張をするが、前述のとおり、管理組合費のうち100円については、実質的に町内会費相当分であって、その部分に関する原告の規約等の定めは拘束力がないのであり、また、区分所有法第3条の趣旨からすると、原告自身が町内会へ入会する形を取ることも、その目的外の事項として、その入会行為自体の効力を認めることはできないものと解されることからすると、これらを根拠に、原告が被告に対し、未払いの町内会費の請求をすることはできない…。
…そうすると、町内会費を請求する権利主体ではない原告が同会費の請求をすることは認めることができない…。

もっとも、管理組合が任意に自治会費を管理費と一緒に徴収することはできます(マンションの管理の適正化に関する指針二7)。

その場合、以下の点に注意する必要があります(規約27条関係コメント③)。

  1. 自治会への加入を強制しない
  2. 自治会への加入を希望しない者から自治会費を徴収しない
  3. 自治会費を管理費とは区分経理する
  4. 管理組合が自治会費の代行徴収する負担を整理する

管理費から自治会費を支払うことができるのか

管理組合が、自治会に対し、管理費から自治会費を支払うこともできません。

管理組合が自治会に対して自治会費を支払えば、管理費という名目で自治会費を組合員から強制的に徴収したのと同じ結果になってしまうからです。

もっとも、管理組合が自治会に対してコミュニティ形成のための業務委託費用を支払うことは認められる余地があります。

この点、自治会を退会した組合員が、管理組合から自治会費を管理費名目で強制徴収されたとして、①管理組合に対して管理費から自治会費分を差し引いた額を超えた支払義務のないことの確認、②自治会に対して退会届提出後に徴収された自治会費の返還を求めた事案において、管理組合は、自治会が徴収すべき自治会費を管理費として組合員から徴収し、これを管理費から委託費などの名目で自治会に支出したとしたうえで、自治会は自由に退会できるから退会後の自治会費支払義務はないとして、組合員の請求を認めた裁判例があります(東京高裁平成19年9月20日)。

▶東京高裁平成19年9月20日

…昭和63年4月以降、被控訴人管理組合が被控訴人自治会に対し、自治活動費との支出科目名で毎年支払ってきた264万7200円は、被控訴人自治会が活動を行う上で必要な経費を賄うための費用としての自治会費に当たる…。
そして、被控訴人両名は、平成17年7月2日本件業務委託契約を締結し、同月29日被控訴人管理組合が被控訴人自治会に業務委託費として264万7200円を支払っており、この中に実際に委託した業務の対価が一部含まれていることは否定できないが、その部分と被控訴人自治会の活動経費とを峻別することはできない上、従前の自治会費と全く同額が支払われており、本件業務委託契約の締結前後で上記金員の性質に変化がな…く、被控訴人管理組合の内部における徴収方法及び被控訴人自治会の活動にも変化がないこと…などからすると、上記264万7200円は従前と同じ自治会費に当たる…。
すなわち、被控訴人管理組合の被控訴人自治会に対する264万7200円の支払は、名目上は業務委託費の支払であるが、実質上は自治会費の徴収代行に当たる…。
したがって、…上記264万7200円は業務委託費に当たるとの被控訴人らの主張は理由がない。
よって、被控訴人管理組合は、被控訴人自治会が徴収すべき自治会費を、管理費として組合員から1戸当たり月額200円徴収し、これを自治活動費又は業務委託費との支出科目名で、全体管理費口から被控訴人自治会に支出したと認めるのが相当である。
このような被控訴人管理組合の自治会費の徴収代行により、組合員は、被控訴人自治会に対し、被控訴人管理組合を介して、自治会費を支払ったと認めることができる。

被控訴人自治会は、会員相互の親睦と福祉及び防災体制を増進し、もって地域社会の向上発展を図ることを目的とした権利能力のない社団であり、その目的、趣旨に照らし、加入を強制されない任意団体である上、被控訴人自治会規約においても会員の退会を制限する規定を設けていないことからすれば、被控訴人自治会の会員は、被控訴人自治会に対する一方的意思表示により退会することができる…。
これに対し、被控訴人らは、被控訴人自治会規約は黙示的に脱会を認めていないと主張するが、被控訴人自治会規約の記載からそのように解することはできない。
また、被控訴人らは、被控訴人自治会は強制加入団体である控訴人管理組合の分身としての地位にあるとも主張するが、両者の関係の特殊性は、一つのマンションの居住者のみで一つの自治会を形成したという点にあり、被控訴人管理組合が管理する対象範囲と被控訴人自治会の自治会活動が行われる範囲が一致していることは認められるものの、それだけで被控訴人自治会が被控訴人管理組合の分身であり強制加入団体に当たると認めることはできない。
なお、被控訴人らが主張するように、「Y1マンション重要事項説明書」においては、本件マンションの居住者が地域活動及び防犯灯の維持管理を目的として設立される町内会に加入することが明記されており、控訴人らもそれを了承したものと認められるが、加入を了承したことをもって被控訴人自治会を脱会することができないとまで解することはできない。
そして、控訴人らは、…平成17年12月26日、同月31日をもって被控訴人自治会を脱会する旨の脱会届をそれぞれ提出したものであるから、この意思表示により同被控訴人を退会したと認められ、平成18年1月1日以降は同被控訴人の会員ではないというべきである。
したがって、控訴人らは、同日以降被控訴人自治会に対し、被控訴人管理組合を介して、自治会費を支払う義務を負わない…。

そうすると、被控訴人自治会は、平成17年12月31日付けで脱会した控訴人両名に対し、既に受領している平成18年1月分から3月分までの自治会費合計600円を清算して返還する義務がある…。
…また、被控訴人管理組合は、控訴人らから管理費として①住棟管理費、②全体管理費、③棟別積立金及び④住棟積立金を徴収しており、この中から月額200円の自治会費を、本件業務委託契約に基づく業務委託費の支出科目名で被控訴人自治会に支払っているが、被控訴人管理組合規約…は、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用」を全体管理費として徴収すると規定していること、被控訴人管理組合は、本件業務委託契約…のとおり、コミュニティ形成業務の一部を被控訴人自治会に委託し、業務委託費との支出科目名で合計264万7200円を支出したことに照らすと、上記月額200円の自治会費は、住戸の区分所有者から徴収した全体管理費の中から拠出されたと認めるのが相当である。
そうすると、被控訴人管理組合が控訴人らから徴収した全体管理費月額1500円のうち200円は、被控訴人自治会に支払われた自治会費に相当すると認めることができるから、控訴人らは、被控訴人管理組合に対し、控訴人らが被控訴人自治会を退会した平成18年1月1日以降において、被控訴人管理組合規約…に基づき月額1300円の全体管理費を支払う義務はあるが、それを超えて全体管理費を支払う義務はない…。

…なお、付言するに、平成16年に改定された国土交通省作成の「マンション標準管理規約」において、管理組合の業務の1つとして「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」が追加されたことからもうかがわれるように、分譲マンションにおいて、居住者間のコミュニティ形成は、実際上、良好な住環境の維持や、管理組合の業務の円滑な実施のためにも重要であるといえるところ、本件のように、被控訴人管理組合が管理する建物、敷地等の対象範囲と被控訴人自治会の自治会活動が行われる地域の範囲が一致しているという点において特殊性のある管理組合と自治会の関係があれば、管理組合が自治会にコミュニティ形成業務を委託し、委託した業務に見合う業務委託費を支払うことは区分所有法にも反しない…。
もっとも、…現在の被控訴人管理組合の被控訴人自治会に対する業務委託費の支払は、実質上自治会費の徴収代行に当たるといわざるを得ないから、本件において、被控訴人管理組合が被控訴人自治会に対し、本件マンションのコミュニティ形成業務を委託しようとするのであれば、強制加入の団体である被控訴人管理組合と任意加入の団体である被控訴人自治会という団体の性格の差異を踏まえて、改めて適切な業務委託関係の創設を検討するのが相当である。