理事を辞退する場合に協力金を負担してもらうことができますか

規約の設定・変更により、理事を辞退する区分所有者に協力金を負担してもらうことが、一部の区分所有者に「特別の影響を及ぼす」場合、その区分所有者の承諾を得なければなりません(31条1項後段)。

これに対し、一部の区分所有者に「特別の影響を及ぼす」場合でなければ、一部の区分所有者が反対をしたとしても、規約の設定・変更により、理事を辞退する区分所有者に協力金を負担してもらうことができます。

そこで、どのような場合に「特別の影響を及ぼす」といえるかについて、説明します。

特に断りのない限り、条文の番号については区分所有法のものです。

特別の影響の意味

「特別の影響を及ぼす」とは、規約の設定・変更などの必要性・合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超える場合をいいます(最高裁平成10年10月30日)。

最高裁平成10年10月30日の詳細については、こちらのページで説明します。

協力金に関する裁判例

理事を辞退する場合の協力金の負担に関し、以下のような裁判例があります。

裁判例については、事案や判断理由の重要な部分を長めに引用しているため、必要に応じて参照してください。

▶横浜地裁平成30年9月28日

本件は、…本件マンション…に居住する原告が、その管理組合である被告に対し、…原告が被告の理事への就任を辞退したところ、被告は、理事候補者として選出された者は理事会協力金を納めることによって理事の就任を辞退することができる旨の管理組合規約の細則に基づき理事会協力金12万円の支払を求め、原告にこれを支払わせたが、上記細則の規定は公序良俗に反するから無効であり、被告は法律上の原因なく12万円を利得したとして、不当利得に基づき、12万円…の支払を求め…た事案である。

…マンションの管理組合を運営するに当たって必要となる業務及び費用は、本来、その構成員である組合員全員が平等にこれを負担すべきものである(最高裁平成22年1月26日…)。
本件マンションは全11棟、364戸から成る大規模な団地であり…、これに応じて理事の職責が重いと解されるところ、…本件細則…により理事候補者とされながら理事に就任することを辞退し、理事の職務を負担しようとしない組合員に対して一定の金銭的負担を求め、組合員間の不公平を是正しようとすることには、必要性と合理性が認められるというべきである。
これに加え、①…本件細則が組合員の意見を聴取するなど慎重な手続を経た上、団地総会において満場一致で制定することとされたこと、②本件規定により理事の就任を辞退した者が支払を求められる理事会協力金の額は月額5000円であり…、理事に就任した者の負担内容…と比較すれば、その負担が過大であるといえないこと、③理事会協力金を支払った場合であっても、その後、5年以内に理事に就任し、任期満了まで務めることによって返金されること…、④第25期及び第26期の理事候補者に選出された者のうち合計14名が理事への就任を辞退したものの、理事会協力金の支払を拒んでいるのは原告だけであることを考慮すれば、本件規定を含む本件細則が本件マンションにおける理事の選出方法等を定めたものとして不合理であるとはいえず、公序良俗に反して無効であるということはできないと判断するのが相当である。

…これに対し、原告は、本件規定において各団地建物所有者の実情を考慮することなく一律に12万円の一括支払義務を課している点や本件細則に理事会協力金の支払義務の猶予又は免除に関する規定が設けられていない点を指摘する。
しかしながら、…本件規定では「原則として」2年任期分の12万円を一括して納める旨定められている上、本件細則では本件細則に定めのない事項が生じたときは理事会で協議し、決定する旨定められているのであって、これらの規定の文言等を合理的に解釈すれば、理事への就任を辞退した者の具体的な状況等によってはその者について理事会協力金の支払猶予や分割払を認めるなどの例外的な取扱いをすることが可能であると解することができる。
そうすると、原告指摘の点は上記判断を左右するものではないと解される。

…したがって、原告の不当利得返還請求は理由がない。