区分所有者は、敷地・共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費・修繕積立金などを管理組合に納入する必要があります(標準管理規約(単棟型)25条1項)。
しかし、専有部分の賃借人は、区分所有者ではないため、管理費などを支払う義務はありません。
この点、管理組合の占有者に対する滞納管理費の支払いの請求を認めなかった裁判例があります(東京地判平成16年5月31日)。
<東京地裁平成16年5月31日>
分譲マンションの管理組合において規定される管理費等の支払義務者とは、あくまでその組合員、即ち、当該物件の区分所有者に他ならないのであって、別途、第三者がこれを負担する旨の合意が管理組合との間に成立していない以上、区分所有者以外の者が管理費等を負担することはあり得ず、本件建物についていえば、原告が競落するまでの間の管理費等の支払義務を負うのは基本的にA以外にない。
…たしかに、被告Y2がAに代わって滞納管理費等の一部を支払っていることは争いがなく、また、…この支払いは被告Y2自身がBに申し入れたものであることが認められるところ、原告はこのことを理由に被告Y2にも支払義務が生じている旨主張しているようである。
しかし、かかる事実を前提にしても、これはあくまで本来の義務者である区分所有者Aが支払うべきものを一時的に被告Y2が立替払いしていたものとみる余地が十分にある。
被告Y2がAから本件建物を借り受けて使用していたという原告の主張が仮に真実であったとしても、そのことのみでは依然として支払義務者は区分所有者であり続けるものであり、被告ら自身の債務として生じる旨の合意が管理組合との間に成立している事実が認められない以上、単なる利用者に管理費等の支払義務が当然に生じるということはないのである。