区分所有法59条1項に基づく競売と管理組合による買い受け

管理費等の債権については特定承継人に対しても行使できます(区分所有法8条、詳細はこちらのページをご覧ください。)。

そのため、滞納管理費等が多額に上るマンションでは、区分所有法59条1項の規定に基づく競売の申立てをしても、マンションの評価額が滞納管理費等の額を下回るために、買受希望者が現れないことがあります。

そこで、管理組合が競売物件を買い受けて滞納額を免除し、その後に売却することが考えられます。

この点、マンションの組合員が、買受人が現れない場合は第三者への転売を前提として管理組合自身が買い受ける決議は、被控訴人の目的の範囲外の行為であると主張して、決議の無効確認を求めた裁判例があります(東京高裁平成25年11月7日)。

組合員の主張は、以下のようなものです。

  1. マンション管理組合の目的の遂行に必要な行為は厳格に限定すべきであるのに、何らの限定をせずに、決議の内容を目的遂行のために間接的に必要な行為として認めるのは不当である
  2. 管理組合が総会の決議で滞納管理費の全部又は一部を免除することが可能であり、この措置をとれば管理組合が自ら買い受けるリスクを負う必要はない
  3. 宅地建物の売買等を業として行うものであり、これを無免許で行うことは宅地建物取引業法に違反する

これに対し、裁判所は、以下のように判断してマンション管理組合の目的の範囲内であると認め、決議は有効であるとしました。

  1. 競売を申し立ててこれを実施しても買受人が現れない場合に限り、管理費等の適正な徴収のために転売を予定して管理組合が買い受けるという行為は、その目的も行為態様も限定されたものであり、これを許容することがマンション管理組合の目的の範囲を無制限に拡大することにはならない
  2. 法律上は特定承継人が承継する(区分所有法8条)とされている支払義務を免除することを前提に競売を申し立て、買受人を確保することが、現実的に必ずしも円滑に遂行できるとは限らず、管理組合が自ら買い受けた上で購入者を手配する方が簡便で確実に目的を遂行できることもあると考えられる
  3. 管理組合が転売目的で買い受ける行為が宅地建物取引業法違反になるか否かは現状では明らかではなく、また行政取締法規に違反する行為であるからといって当然に法人の目的の範囲外の行為であることにはならない

したがって、区分所有者の共同利益に違反する行為をする者を排除して、管理費等の適正な徴収を実現するための措置として、管理組合が競売物件を買い受けることもできると考えられます。