組合員が破産した場合でも管理費を請求できますか

管理費を滞納している組員員が破産した場合、破産手続きが始まる前に発生した管理費を請求することは困難ですが、破産手続きが始まった後に発生した管理費は請求できます。

破産手続きは、支払不能となった場合に財産を処分して清算するための手続きです。

破産手続きを開始する申立てを裁判所にして、裁判所が支払不能と判断して手続きを開始する決定をした時から、破産手続きが開始されます。

破産手続では、①裁判所が破産手続開始を決定する前に発生した債権と②破産手続きを決定した後に発生した債権とで取扱いが異なります。

特に断りのない限り、条文については区分所有法のもの、「規約」は「標準管理規約単棟型」を意味します。

破産手続開始前に発生した管理費

破産手続き開始決定前に発生した管理費を請求する権利は、破産債権という権利となります(破産法2条5号)。

破産債権は、財団債権を支払った後にも支払いできる財産が残っている場合に、裁判所を通じて配当を受けることになります。

破産債権の中には、他の破産債権より優先して配当を受けることのできる優先的破産債権という権利があります。

管理費を請求する権利は優先的破産債権となり(破産法7条1項、98条1項)、他の破産債権よりも優先的な配当を受けることができます。

もっとも、破産者には破産債権の配当に充てる財産のないことがほとんどです。

また、破産手続きにおいて、組合員が免責許可決定を受けた場合、破産手続き開始決定前に滞納していた管理費の支払義務を免れます(破産法253条1項)。

ただし、管理費の支払義務そのものが消滅するわけではないため、組合員が任意に支払った場合は有効な弁済となり、管理組合は支払われた管理費を返還する義務を負いません。

破産手続開始後に発生した管理費

破産手続き開始決定後に発生した管理費を請求する権利は、財団債権という権利になります(破産法2条7号、148条1項2号)。

財団債権は、破産債権に先立って支払いを受けることができます(破産法151条)。

管理組合は、破産管財人が選任されている場合には破産管財人に、破産管財人が選任されていない場合には組合員に、管理費を請求できます。

破産した組合員がマンションを売却した場合

破産して免責許可決定を受けた組合員がマンションを売却した場合、管理組合は、マンションの買主に対して滞納管理費を請求できます(7条1項前段)。

マンションの買主に対する滞納管理費の請求については、こちららのページをご覧ください。

破産した組合員が死亡した場合

破産して免責許可決定を受けた組合員が死亡した場合、管理組合は、相続人に対して滞納管理費を請求できないとした裁判例があります(東京地裁平成18年7月21日)。

▶東京地裁平成18年7月21日

被告Y1及び亡Aが、平成15年8月26日に破産宣告を受け、その後免責許可決定を得たことは上記のとおりである。
したがって、被告Y1及び亡Aは、原告に対して、平成15年8月26日以前に弁済期にあった管理費等の支払義務を免れた。
原告は、被告らは、亡Aの死により開始した相続により、亡Aの負担する債務を承継した旨主張するが、採用できない。
免責許可決定により破産宣告時に亡Aが負担していた債務は責任のないものとなったのであるから、これを相続した被告らが、その責任を負担する理由はない。
また、原告は、区分所有法8条を援用するが、同条は、同法7条1項に規定する債権は、その債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができると規定しているにとどまり、相続等による包括承継人を除外しているのであるから、同法8条を根拠として、被告らが亡Aの負担していた管理費等の支払債務を、相続とは別個に直接に負担するとみることはできない。
原告は、同条の趣旨からして、当然、包括承継人も責任を負うと主張するが、特定承継人は、従前の債務に不払いがあることを知りながら、あえて区分所有権を取得していることが通例であり(売買であれば、買主が負担するべき債務相当額を代金から減額するのが通例であろう。)、包括承継人は、債務も承継することが通例である。
したがって、むしろ、特定承継人についてこそ同条を適用すべき理由があるのであって、被相続人が破産免責を受けた場合に限って、同条の適用を認めるべき根拠はない。
そして、後記のとおり、管理費等については、特別の先取特権が成立すると解されるから、このように解したとしても、区分所有者が破産免責を受けても、直ちに管理費等の債権が取立不能に陥ることはない。