マンション管理計画認定制度

令和2年6月24日に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律(令和2年法律第62号)」が公布されました。

改正マンション管理適正化法ではマンション管理計画認定制度が創設され、令和4年4月1日から施行されます。

また、令和3年9月28日に、国交省は、マンション管理適正化法の改正を受けて、「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」(基本方針)を定め(マンション管理適正化法3条)、マンション管理計画認定制度の認定基準を示しています。

基本方針も令和4年4月1日に施行されます。

マンション管理計画認定制度とは

マンション管理計画認定制度とは、管理適正化推進計画(マンション管理適正化法3条の2)を作成した地域において、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、マンション管理組合が地方公共団体から適切な管理計画を持つマンションとしての認定を受けることができる制度です。

認定には、マンションが所在する地方公共団体がマンション管理適正化推進計画を作成していることが必要となります(マンション管理適正化法5条の3第1項)。

マンション管理適正化推進計画とは、地方公共団体が、国が定めた基本方針に基づき、管理の適正化の推進を図るために作成することのできる計画です(マンション管理適正化法3条の2)。

管理計画認定のメリット

管理計画認定のメリットとしては、次のようなことが期待されています。

  • 住人の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持・向上しやすくなる
  • 適正に管理されたマンションであることが市場において評価される
  • 適正に管理されたマンションがあることで、地域価値の維持・向上に繋がる

認定をとるための手続き

管理組合の総会で認定申請することを決議し、定められた様式で地方公共団体に認定申請を行い、地方公共団体において一定の基準を満たすと判断された場合に、認定を受けることができます。

マンション管理計画認定制度については、公益財団法人マンション管理センターが導入する管理計画認定手続支援サービス(オンライン)により、認定申請を行う管理組合と認定審査を行う地方公共団体の双方の負担を軽減することが計画されています。

支援サービス導入による具体的な効果は、以下のようなものが想定されています。

  1. 管理組合は管理計画認定手続支援システム(インターネット上の電子システム)を利用することで、管理計画認定制度の申請手続き等をオンライン上で行うことができ、地方公共団体に対してスムーズに申請することが可能となる
  2. 管理計画認定にあたっては、マンション管理センターが実施する、事前確認にかかる講習を受けたマンション管理士が事前確認を行い、認定基準を満たすものは公益財団法人マンション管理センターにて適合証を発行する
    *地方公共団体独自で上乗せ基準が設けられている場合、別途地方公共団体による審査が必要となります。
  3. 適合証の発行を受けたものについては、地方公共団体(認定主体)は、その審査の事務手続きを省略することが可能となる
  4. 事前確認を行う場合は、他団体のマンション管理の評価サービス(一般社団法人マンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」・一般社団法人日本マンション管理士会連合会による「マンション管理適正化診断サービス」)についても併せて申請を行うことを可能とする予定であり、マンション管理に関するワンストップサービスを実現する
    *一般社団法人マンション管理業協会はマンション管理会社から構成される団体、一般社団法人日本マンション管理士会連合会はマンション管理士から構成される団体です。

また、マンション管理計画認定制度に関する事務手続きを円滑に行えるように、地方公共団体向けに認定基準の確認方法・確認に必要な書類・留意事項などをまとめた「マンションの管理の適正化の推進に関する法律第5条の3に基づくマンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」が策定されています。

なお、管理計画の認定は、5年ごとに更新を受けなければ、効力を失います(マンション管理適正化法5条の6)。

管理計画の認定基準

マンション管理適正化推進計画を作成した都道府県知事などは管理計画の認定の申請があった場合、次の基準に適合すると認めるときは、その認定をすることができます(マンション管理適正化法5条の4)。

  1. マンションの修繕その他の管理の方法が国土交通省令で定める基準に適合するものであること
  2. 資金計画がマンションの修繕その他の管理を確実に遂行するため適切なものであること
  3. 管理組合の運営の状況が国土交通省令で定める基準に適合するものであること
  4. その他マンション管理適正化指針及び都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること

そして、国交省が定めた「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」(基本方針)別紙二(24頁~26頁)においては、管理計画の認定の基準は、以下の基準のいずれにも適合することとされています。

1 管理組合の運営
 ⑴ 管理者等が定められていること
 ⑵ 監事が選任されていること
 ⑶ 集会が年1回以上開催されていること

2 管理規約
 ⑴ 管理規約が作成されていること
 ⑵ マンションの適切な管理のため、管理規約において災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部の立ち入り、修繕等の履歴情報の管理等について定められていること
 ⑶ マンションの管理状況に係る情報取得の円滑化のため、管理規約において、管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付(または電磁的方法による提供)について定められていること

3 管理組合の経理
 ⑴ 管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること
 ⑵ 修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
 ⑶ 直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額が全体の1割以内であること

4 長期修繕計画の作成及び見直し等
 ⑴ 長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され、長期修繕計画の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金額について集会にて決議されていること
 ⑵ 長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
 ⑶ 長期修繕計画の実効性を確保するため、計画期間が30年以上で、かつ、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように設定されていること
 ⑷ 長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと
 ⑸ 長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
 ⑹ 長期修繕計画の計画期間の最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっていること

5 その他
 ⑴ 管理組合がマンションの区分所有者等への平常時における連絡に加え、災害等の緊急時に迅速な対応を行うため、組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行っていること
 ⑵ 都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること

新築マンションを対象とした認定(予備認定)

マンション管理計画認定制度は既存マンションが対象となりますが、適切な管理が期待される新築マンションを対象として公益財団法人マンション管理センターが認定を行う仕組み(予備認定)の実施に向けた検討も進められています。

法律に基づく管理計画認定制度を予備認定制度で補完することで、全体としてマンションの適正な管理につなげていく狙いがあり、今後制度の詳細についての検討を進めていくとされています。