規約と使用細則にはどのような違いがありますか

マンションの管理・使用に関するルールには、規約と使用細則があります。

以下、それぞれの違い等について説明します。

規約とは

規約とは、建物・敷地・附属施設の管理や使用について、区分所有者らが相互に従うべきルールをいいます(区分所有法30条1項)。

規約の対象となるものは、次の2つがあります。

  • 個別的に規約でしか定めることができないもの(必要的規約事項)
  • 一般的・個別的に規約でも定めることができるもの(任意的規約事項)

必要的規約事項

必要的規約事項となるものは、次のとおりです。

条文の番号はいずれも区分所有法のものです。

  • 規約共用部分の定め (4条2項)
  • 規約敷地の定め (5条1項・2項)
  • 共用部分の共有関係 (11条2項)
  • 共用部分の共有持分の割合 (14条4項)
  • 共用部分等の変更決議における区分所有者の定数の削減 (17条1項・21条)
  • 共用部分等の管理に関する決定方法 (18条2項・21条)
  • 共用部分等の負担および利益収取の割合 (19条・21条)
  • 専有部分と敷地利用権の分離処分の許容 (22条1項)
  • 各専有部分に対する敷地利用権の割合 (22条2項)
  • 管理者の選任・解任方法(25条1項)
  • 管理者の権利・義務 (26条1項・28条)
  • 管理所有 (27条1項)
  • 建物・敷地・附属施設の管理に要する経費についての負担の割合(29条1項)
  • 集会招集請求権の定数の削減(34条3項)
  • 集会の招集通知の期間の伸縮・建物内掲示による招集通知(35条1項・4項)
  • 通知事項以外の事項についての集会の決議 (37条2項)
  • 集会での議決権割合・議決定数の変更(38条・39条1項)
  • 管理組合法人の理事の互選による代表理事の決定(49条5項後段)
  • 管理組合法人の理事・監事の任期(49条6項但書・50条4項)
  • 管理組合法人の事務執行方法 (52条1項但書)
  • 管理組合法人の残余財産の帰属の割合(56条)
  • 建物の価格の2分の1以下の滅失の場合の復旧(61条4項)
  • 建替えを会議の目的とする集会の招集通知期間の延長 (62条4項)

任意的規約事項

任意的規約事項となるものは、次のとおりです。

条文の番号はいずれも区分所有法のものです。

  • 先取特権の目的となる債権の範囲 (7条1項)
  • 管理者・管理組合法人が区分所有者のために訴訟の当事者となること(26条4項・47条8項)
  • 管理者がいない場合の規約・議事録等の保管者(33条1項・42条5項・45条4項)
  • 電磁的方法による議決権の行使 (39条3項)
  • 管理組合法人の代表理事・共同代表の定め (49条5項)

使用細則とは

使用細則(細則)とは、建物・敷地・附属施設の管理や使用について定められる規約以外のルールをいいます。

使用細則は、規約に基づいて定められることが多いですが、規約に基づかずに(集会の決議等で)定められることもあります。

マンションの管理・使用に関する区分所有者相互間の事項について定める場合に、規約では基本的な事項のみを定め、より詳細な具体的な事項については使用細則で定めることが通常です。

具体例

標準管理規約(単棟型)18条では、「対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。」とされています。

また、18条関係のコメント①では、「使用細則で定めることが考えられる事項としては、動物の飼育やピアノ等の演奏に関する事項等専有部分の使用方法に関する規制や、駐車場、倉庫等の使用方法、使用料等敷地、共用部分の使用方法や対価等に関する事項等があげられ、このうち専有部分の使用に関するものは、その基本的な事項は規約で定めるべき事項である 。」とされています。

そして、標準管理規約(単棟型)では、具体的に以下のような使用細則等を予定しています。

  • 敷地・共用部分等の用法(13条)…「自転車置場使用細則」(13条関係コメント)
  • バルコニー等の専用使用権 (14条)…「バルコニー使用細則」(14条関係コメント②)
  • 駐車場の使用 (15条)…「駐車場使用細則」 (15条関係コメント③)
  • 対象物件の使用(18条)…「ペット飼育細則」 (18条関係コメント②)

使用細則の設定・変更・廃止

規約の設定・変更・廃止は、区分所有者と議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(特別多数決議)が必要です(区分所有法31条1項)。

これに対し、使用細則の設定・変更・廃止は、規約により区分所有者と議決権の各過半数による集会の決議(普通決議)とされることが通常です(区分所有法39条1項)。

なお、標準管理規約(単棟型)では、使用細則の設定・変更・廃止は、議決権総数の半数以上を有する組合員が出席した集会において出席組合員の議決権の過半数で決するとされています(48条4 号・47条1項・2項)。

もっとも、使用細則などの名称の定めであっても、規約として定める旨が明らかにされている場合、「規約」として扱われます。

また、必要的規約事項については、もっぱら規約で定める必要があり(区分所有法31条1項前段により特別多数決議が必要となります。)、使用細則等で定めることはできません。

この点、住戸数21戸に対し12台分の駐車区画しかないマンションにおいて、特定の区分所有者による駐車場使用態勢を維持する旨の駐車場使用細則の設定については、集会における過半数決議によるのではなく、規約に関する事項として特別多数決議によるべきであるとした裁判例があります(那覇地裁平成16年3月25日)。

▶那覇地裁平成16年3月25日

本件は、原告らが、原告らを含む各区分所有者で構成されるマンション管理組合である被告の総会において、同マンション駐車場の使用及び管理運営について賛成多数で制定決議された駐車場使用細則が、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議を要する規約にあたるとして、被告らに対し、当該決議が無効であることの確認を求めた事案である。
…「共用部分」たる「附属施設」である本件駐車場の使用、管理に関する事項について規定する本件細則が、区分所有法30条1項及び31条1項にいう「規約」にあたるのかという点についても、その規定事項が同法18条にいう「管理」の範囲内にあるか、これを超えるのかという観点から決するべきであり、さらに、その点を判断する際には、単に形式的に、その規定文言のみに基づき判断するのではなく、その規定が設けられた経緯、趣旨をも踏まえて、その規定の意味合いを実質的に勘案して判断する必要があるというべきであって、例えば、その規定内容が、共用部分としての性質に反し、あるいはその性質を変更するような使用態様を規定するもの、すなわち、原告の主張するとおり、特定の区分所有者に半永続的な専用使用権を与えるようなものであれば、当該規定内容は、もはや「管理」の範囲を超えるものであって、「規約」事項にあたるといわなければならない。
…本件細則は、従前、本件駐車場の特定の区画が先着順で駐車場契約をした特定の区分所有者らにより専用使用されてきた実態を容認し、今後も、当該区画について、事実上同人らの優先的な使用態勢を維持存続することを意図して制定されたものと認められ、実質的に、特定の区分所有者に本件駐車場の特定の区画の優先使用を認める規定内容となっていると評価することができるから、そのような優先的な使用態勢を認めることは、原告が主張する半永続的な専用使用権を付与するものというかどうかはさて措くとしても、共用部分たる駐車場としての性質に反するものであることが明らかである。
したがって、かかる優先的な使用態勢を内容とする規定事項は、区分所有法18条1項で定める共用部分の「管理」の範囲を超えるものであるといわなければならず、同法30条1項、31条1項にいう「規約」により定めるのが相当であるといわなければならない。