理事長の解職

以前の標準管理規約(平成23年7月27日版)では、理事長・副理事長・会計担当理事は、理事の互選により選任するとされていました(35条3項)。

このような規約がある管理組合において、理事長を解職する(単なる理事にする)には、理事会の決議と総会の決議のどちらが必要でしょうか。

この点、理事長を管理者とし、役員である理事に理事長を含むとした上、役員の選任・解任について総会の決議を経なければならないとの規約のあるマンション管理組合において、理事の互選により選任された理事長について、理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができるとされた裁判例があります(最高裁平成29年12月18日)。

現在の標準管理規約(平成28年3月に改正)では、理事長・副理事長・会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任するとされています(35条3項)。

この標準管理規約と同様の規約を定めたマンション管理組合における理事長の解職に関しても、理事会で選任された理事長について理事会の決議により理事長の職を解き、別の理事を理事長に定めることも理事会に委ねる趣旨であると考えることができます。

<最高裁平成29年12月18日>

ア 区分所有法によれば、区分所有者は、全員で、建物等の管理を行うための団体を構成し、同法の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができるとされ(3条)、規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができるとされている(25条1項)。
そうすると、区分所有法は、集会の決議以外の方法による管理者の解任を認めるか否か及びその方法について区分所有者の意思に基づく自治的規範である規約に委ねているものと解される。

イ そして、本件規約は、理事長を区分所有法に定める管理者とし(43条2項)、役員である理事に理事長等を含むものとした上(40条1項)、役員の選任及び解任について総会の決議を経なければならない(53条13号)とする一方で、理事は、組合員のうちから総会で選任し(40条2項)、その互選により理事長を選任する(同条3項)としている。
これは、理事長を理事が就く役職の1つと位置付けた上、総会で選任された理事に対し、原則として、その互選により理事長の職に就く者を定めることを委ねるものと解される。
そうすると、このような定めは、理事の互選により選任された理事長について理事の過半数の一致により理事長の職を解き、別の理事を理事長に定めることも総会で選任された理事に委ねる趣旨と解するのが、本件規約を定めた区分所有者の合理的意思に合致するというべきである。
本件規約において役員の解任が総会の決議事項とされていることは、上記のように解する妨げにはならない。

ウ したがって、上記イのような定めがある規約を有する上告人においては、理事の互選により選任された理事長につき、本件規約40条3項に基づいて、理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができると解するのが相当である。