総会の議事録

総会の議事録の作成・保管・閲覧をどのように行うかについて説明します。

議事録の作成者

議長は、書面又は電磁的方法により、議事録を作る必要があります(区分所有法42条1項)。

管理会社に管理業務を委託している場合、管理会社の職員が議事録作成の補助をすることはありますが、あくまで議事録を作成するのは議長です。

議事録が書面で作成されている場合、議長及び集会に出席した区分所有者の2人がこれに署名押印する必要があります(区分所有法42条3項、標準管理規約49条2項)。

議事録が電磁的記録で作成されている場合、議長及び集会に出席した区分所有者2人が行う法務省令で定める署名押印に代わる措置を執る必要があります(区分所有法42条4項、標準管理規約49条4項)。

法務省令で定める署名押印に代わる措置とは、電子署名及び認証業務に関する法律2条1項の電子署名のことをいいます(区分所有法施行規則4条)。

そして、「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもの)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいいます(標準管理規約コメント第49条関係)。

  1. 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること
  2. 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること

代理人が出席した場合、代理人が署名押印することになります。

議事録をいつまでに作成するのかについては、区分所有法にも標準管理規約にも定めはありませんが、2週間以内を目安として作成することが望ましいと考えられます。

以下の場合、議長は20万円以下の過料に処せられます(区分所有法42条1項~4項・71条3号)。

  1. 議事録を作成しない
  2. 議事録に記載・記録すべきことを記載・記録しない
  3. 虚偽の記載・記録をした

議事録の記載内容

議事録には、議事の経過の要領とその結果を、記載・記録する必要があります(区分所有法42条2項、標準管理規約49条2項)。

議案の経過とは、議題・議案・討議の内容と採決方法のことをいい、それらの要領・要点を記載します。

議事の結果とは、表決を行った結果(可決か否決かの結果)をいいます。

標準管理委託契約書コメント29別表第1 2関係では、「理事会及び総会の議事録は、管理組合の活動の重要な資料となることを踏まえ、マンション管理業者に議事録の案の作成を委託する場合は、その内容の適正さについて管理組合がチェックする等、十分留意する。議事録については、議事の経過の要点及びその結果を記載する必要がある。「議事の経過」とは議題、議案、討議の内容及び採決方法等を指すが、それらの要点を記載することで足り、すべての発言を一言一句記録するものではない。しかし、議事に影響を与える重要な発言は記録することに留意する。」とされています。

なお、総会の議事録に不備があった場合でも、総会の決議自体は有効です(東京地裁平成20年4月11日、東京地裁平成26年7月10日)。

▶東京地裁平成20年4月11日

被告は、同臨時総会の議事録について瑕疵がある旨主張するが、臨時総会における決議がないとか議決の内容が事実でないとか主張するものではない。
そうすると、議事録に瑕疵があるとしても、臨時総会自体に瑕疵がないのであれば、臨時総会の決議は有効であるから、被告の主張は失当である。

▶東京地裁平成26年7月10日

原告は、…定期総会議事録の要式の不備を指摘し、議事録が無効である旨主張するが、仮に議事録が無効であるとしても決議自体の効力が直ちに否定されるものではないのであって、その主張には理由がない。

議事録の保管

議事録は、管理者(管理者がいないときは建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定める者)が保管します(区分所有法42条5項・33条1項)。

また、規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示する必要があり(区分所有法42条5項・33条3項)、標準管理規約では、理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければならないとされています(49条4項[電磁的方法が利用可能な場合49条6項])。

保管期間については、区分所有法や標準管理規約には規定はありませんが、総会決議の無効を主張する期間にも制限がないことなどから、保管期間を定めずに永久保存としておくことが望ましいと考えられます。

管理者が総会の議事録を保管しない場合、20万円以下の過料に処せられます(区分所有法33条1項本文・42条5項・71条1号)。

議事録の閲覧

議事録を保管する者は、利害関係人の請求があった場合、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒めません(区分所有法42条5項・33条2項)。

標準管理規約では、理事長は、議事録を保管し、組合員又は利害関係人の書面による請求があったときは、議事録の閲覧をさせなければならならず、この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができるとされています(49条3項[電磁的方法が利用可能な場合49条5項])。

「利害関係人」とは、敷地、専有部分に対する担保権者、差押え債権者、賃借人、組合員からの媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等法律上の利害関係がある者をいい、単に事実上利益や不利益を受けたりする者、親族関係にあるだけの者等は対象とはならないとされています(標準管理規約コメント49条関係①)。

標準管理規約では、理事長は、総会の議事録については、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求に基づき、当該請求をした者が求める情報を記入した書面を交付することができ、この場合において、理事長は、交付の相手方にその費用を負担させることができるとされています(標準管理規約64条3項、64条関係コメント⑤・⑥)。

管理者が正当な理由がないのに総会の議事録の閲覧を拒んだ場合、20万円以下の過料に処せられます(区分所有法33条2項・42条5項・71条1号)。