管理費・修繕積立金を請求する権利は何年で時効により消滅しますか

管理費・修繕積立金を請求する権利は、時効により消滅します。

そのため、管理組合は、長期間にわたって管理費などの滞納を放置しないように気を付ける必要があります。

民法が改正され、令和2年4月1日から改正後の民法が適用されるため、改正前の民法と改正後の民法に分けて説明します。

改正後の民法の施工日前(令和2年3月31日まで)に管理費などの債権が発生した場合、改正前の民法が適用されます(民法改正法附則10条4項)。

改正前の民法

マンション管理組合が組合員に対して有する管理費・特別修繕費を請求する権利は、改正前の民法169条の債権(定期給付債権)となります(最高裁平成16年4月23日)。

▶最高裁平成16年4月23日

本件の管理費等の債権は、前記のとおり、管理規約の規定に基づいて、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的な額は総会の決議によって確定し、月ごとに所定の方法で支払われるものである。
このような本件の管理費等の債権は、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条所定の債権に当たるものというべきである。
その具体的な額が共用部分等の管理に要する費用の増減に伴い、総会の決議により増減することがあるとしても、そのことは、上記の結論を左右するものではない。

改正前の民法169条は、定期給付債権(年又はこれより短い時期によって定めた金銭…の給付を目的とする債権)は、5年間行使しないと消滅するとしています。

また、消滅時効の期間は権利を行使できる時から進行します(改正前民法166条1項)。

したがって、管理費などを請求する権利は、支払期日になれば権利を行使できるため、支払期日から5年を経過すると、時効により消滅します。

改正後の民法

改正後の民法では、改正前の民法169条の定期給付債権は廃止されました。

そして、債権は、次の場合に時効によって消滅します(改正後の民法166条1項各号)。

  1. 債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しない場合
  2. 権利を行使できる時から10年間行使しない場合

管理費は、毎月一定期日までに支払うことを定められているため、支払期日になれば管理組合は権利を行使できることを知ったことになります。

したがって、改正前の民法と同様に、管理費などを請求する権利は、支払期日から5年を経過すると、時効により消滅します。

結果的には、民法改正の前後で消滅時効の期間に変わりはありません。

時効の援用

仮に、消滅時効の期間が経過したとしても、管理費を請求する権利は、期間の経過により当然には消滅せず、組合員が消滅時効を援用することによって初めて消滅します(民法145条)。

援用とは、組合員が時効の利益を受けることを意思表示することです。

そのため、組合員が消滅時効を援用しない限り、管理組合は、消滅時効の期間が経過した月の分を含めて、すべての管理費を請求できます。

なお、区分所有権の特定承継人(区分所有法8条)による時効の援用が信義則に反し権利の濫用として許されないとした裁判例もあります(東京地裁平成27年7月16日)。

▶東京地裁平成27年7月16日

本件は、マンションの管理組合である控訴人が、同マンションの一室の区分所有権を不動産競売により取得した被控訴人Y1及び同人から同室の区分所有権を売買により取得した被控訴人Y2に対し、…区分所有法…8条及び管理規約…に基づき、被控訴人Y1の前区分所有者が滞納した平成20年7月分から11月分までの管理費等…の連帯支払を求める事案である。

…本件規約上、組合員が変更した際にはその資格の取得者及び喪失者はその旨を書面により原告に届け出なければならない…にもかかわらず、被控訴人Y2は、上記規約に違反し、被控訴人Y1から本件居室の区分所有権を取得した平成21年1月9日以降、控訴人に対して組合員変更の届出をせずに被控訴人Y1名義で本件居室の管理費等を支払い続けていたことに加え、本件マンションが全3棟に及ぶ地上42階地下2階の大規模高層マンションであって区分所有者が多数いることが認められることからすると、控訴人において、本件居室の区分所有者が被控訴人Y2に変更されたことを認識することができなかったのはやむを得ないといえる。
上記事実関係に加え、…被控訴人Y2は、被控訴人Y1の代表取締役として、平成20年11月7日には、Aから被控訴人Y1に組合員を変更することを届け出て、その際には控訴人からAの滞納管理費等の存在を知らされていた上、遅くとも平成25年8月12日には、本件催告の存在を認識し、控訴人に対してAの滞納管理費等の存否につき問い合わせるなどしたにもかかわらず、控訴人の被控訴人Y1に対する督促事件が通常訴訟に移行した後の平成26年6月になるまで、本件居室の区分所有権の自身への移転を明らかにしなかったことが認められることなどをも併せて考慮すると、控訴人の被控訴人Y2に対する適時の権利行使を著しく困難ならしめた要因は被控訴人Y2の行動にあったといわざるを得ない。
そうすると、被控訴人Y2が消滅時効を援用することは、信義則に反し、権利の濫用として許されないというべきである。