強制執行の対象となる組合員の財産を調査することはできますか

組合員が管理費・修繕積立金を滞納し、管理組合が裁判を行って判決を取得した場合、組合員の財産に対して強制執行ができます。

もっとも、預貯金の差し押えをするなら銀行・支店、給料を差し押えをするなら勤務先などの情報を取得して、管理組合が強制執行の対象となる財産を特定する必要があります。

しかし、管理組合が組合員の財産を独自に調査することは困難です。

そこで、債権者が債務者の財産を調査するため、以下のような手続きがあります。

弁護士会照会

弁護士会照会とは、弁護士が依頼を受けた事件について、証拠や資料を収集して事実を調査するなど、その職務活動を円滑に行うために設けられた制度(弁護士法23条の2)です。

弁護士会照会を利用して、金融機関に対して債務者の預金口座の情報を照会することなどができます。

弁護士会照会は、個々の弁護士ではなく弁護士会が、必要性と相当性が認められると判断したものについてのみ、弁護士会会長名で行うことができます。

財産開示手続

財産開示手続は、裁判所が債務者に対して財産に関する情報の開示を求める手続きです。

債務者(開示義務者)が財産開示期日に裁判所に出頭し、財産状況を陳述することにより、債権者が債務者の財産に関する情報を取得できます。

要件

財産開示手続きを実施するための要件は以下のとおりです。

① 債権者が執行力のある債務名義の正本を有すること(民事執行法197条1項)

② 次のいずれかに該当すること

  • 強制執行などの手続(申立日より6か月以上前に終了したものを除く)において、金銭債権の完全な弁済を得ることができなかったこと(民事執行法197条1項1号)
  • 知れている財産に対する強制執行を実施しても、金銭債権の完全な弁済を得られないこと(民事執行法197条1項2号)。

③ 債務者が申立日前の3年以内に財産開示期日で財産を開示した者でないこと(民事執行法197条3項本文)

財産開示期日

財産開示を行うことが決定すると、約1か月後に財産開示期日が指定され、財産開示期日の約10日前が債務者(開示義務者)が財産目録を提出する期限とされる運用です(民事執行法199条1項、民事執行規則183条参照)。

申立人は、提出された財産目録を閲覧・謄写できます(民事執行法201条1号・17条)。

申立人などは、財産開示期日に出頭し、裁判所の許可を得て、開示義務者に対し質問できます(民事執行法199条4項)。

開示義務者が財産開示期日に出頭しなかった場合、財産開示手続は終了します。

罰則

財産開示手続において、開示義務者が、正当な理由なく、以下の行為をした場合、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(民事執行法213条1項5号・6号)。

  • 呼出しを受けた財産開示期日に出頭しない場合
  • 財産開示期日において宜誓を拒んだ場合
  • 宣誓した開示義務者が陳述を拒んだ場合
  • 宣誓した開示義務者が虚偽の陳述をした場合

第三者からの情報取得手続

第三者からの情報取得手続は、債務者の財産に関する情報を債務者以外の第三者から提供してもらう手続です。

第三者から入手できる情報は以下のとおりです。

  • 不動産に関する情報:債務者名義の不動産(土地・建物)の所在地や家屋番号
  • 給与(勤務先)に関する情報:債務者に対する給与の支給者(債務者の勤務先)
  • 預貯金に関する情報:債務者の有する預貯金口座の情報(支店名、口座番号、額)
  • 上場株式・国債などに関する情報:債務者名義の上場株式・国債等の銘柄や数など

不動産に関する情報取得手続

不動産に関する情報取得手続きは、登記所から、債務者が所有権の登記名義人である土地・建物などに関する情報を取得するための手続です(民事執行法205条1項)。

不動産に関する情報取得手続は、原則として財産開示期日における手続が実施され、財産開示期日から3年以内にする必要があります(民事執行法205条2項)。

不動産に関する情報取得手続は、令和3年5月16日までに施行されることになっていますが、現在のところ施行されていません。

勤務先に関する情報取得手続

勤務先に関する情報取得手続は、市町村や日本年金機構などから、債務者の給与債権に関する情報を取得するための手続です(民事執行法206条1項)。

勤務先に関する情報取得手続は、以下の請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者であることが必要です(民事執行法206条1項)。

  • 扶養義務などに係る請求権(民事執行法151条の2第1項各号)
  • 人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権

したがって、管理組合は、マンションの管理費・修繕積立金の支払請求権について、勤務先に関する情報取得手続を利用することはできません。

なお、勤務先に関する情報取得手続は、原則として財産開示期日における手続が実施され、財産開示期日から3年以内にする必要があります(民事執行法206条2項)。

預貯金債権などに関する情報取得手続

預貯金債権銀などに関する情報取得手続は、銀行などから、債務者の預貯金債権に関する情報を取得するための手続です(民事執行法207条1項1号)。

預貯金債権などに関する情報取得手続では、不動産や給与債権に関する情報取得手続と異なり、事前に財産開示手続をする必要はありません。

株式に関する情報取得手続

株式に関する情報取得手続は、振替機関などから、債務者の振替社債などに関する情報を取得するための手続です(民事執行法207条1項2号)。

株式に関する情報取得手続では、不動産や給与債権に関する情報取得手続と異なり、事前に財産開示手続をする必要はありません。

情報提供の方法

第三者による情報は、裁判所に対して書面で提供されます(民事執行法208条1項)。

そして、裁判所に対して第三者により情報の提供がされたときは、裁判所が申立人に回答書の写しを送付します(民事執行法208条2項前段)。

なお、第三者が直接申立人に回答書の写しを送付した場合、裁判所から写しは送付されません(民事執行規則192条2項)。

債務者に対する決定の通知

第三者から情報が提供された場合、裁判所は、債務者に対し、財産に関する情報が提供されたことを通知します(民事執行法208条2項後段)。

裁判所が債務者に情報を通知する時期は、債権者が情報取得をしたうえで強制執行を行うまでの期間を考慮し、処分が容易な預貯金債権などに関する情報提供の場合、債権者が情報を取得した後に強制執行を行うのに要する期間が経過した後(概ね1か月)と考えられます。

目的外利用の禁止

申立人は、第三者からの情報取得手続において得られた債務者の財産に関する情報を、債務者に対する債権をその本旨に従って行使する目的以外の目的のために利用・提供することは禁止されます(民事執行法210条1項)。

この規定に違反した場合、30万円以下の過料となります(民事執行法214条2項)。