将来の管理費の請求

区分所有者が管理費を滞納している場合、将来にわたっても管理費を滞納し続けるおそれが大きいため、管理組合としては、今後の管理費についても、予め請求しておきたいと考えられます。

この点、将来の管理費の請求については、あらかじめ請求をする必要がある場合に限り認められます(民事訴訟法135条)。

あらかじめ請求をする必要があるかどうかは、管理費を滞納している期間、以前の滞納の有無やその際の区分所有者の対応、裁判における区分所有者の対応などを考慮して、判断されます。

そして、将来の管理費を請求できる期間は、区分所有者でなくなるまでの期間になると考えられます。

将来の管理費の請求が問題となった裁判例を紹介します。

<東京地裁平成10年4月14日>

…被告の管理費等の支払義務は継続的に月々確実に発生するものであること、本件、マンションは戸数10との比較的小規模なマンションであり、被告一人の管理費等の滞納によっても、原告はその運営や財政に重大な支障を来すおそれが強いこと、将来分をも含めて 被告の管理費等支払拒絶の意思は相当に強く、将来分の管理費についても被告の即日の履行が期待できない状況にあることなどが認められ、以上の事実によれば、将来の履行期未到来の管理費等(有線使用料を含む)の支払請求も認められる。[請求できる期間については定めていません。]

<東京地裁平成15年11月28日>

…被告は、平成8年9月に本件マンションの一室を購入してから直ちに管理費等を滞納し始め、その後現在に至るまで、原告が内容証明郵便による督促、訴訟提起ないし差押え等の法的措置を講じない限り管理費等を支払わなかったこと、そのような法的措置が止むと直ちに滞納を再開してきたこと…被告は、上記法的措置がとられた場合にはその都度、滞納管理費等を一括して支払えたこと、本件マンションでは、原告に対し自己が開設する預金口座から原告名義で開設した預金口座に自動振替の方法によって管理費等を支払うことになっているにもかかわらず、一向に自動振替手続をとろうとしないことなどの点に鑑みると、被告が、自らの支払原資の有無にかかわらず、原告から法的措置をとられるまでは管理費等を支払わないという強固な意思を有していることも窺えるところである。
…そうとすると、本件訴訟が終了するや否や、被告が再び管理費等の滞納を始めるおそれが高く、そうなると原告としてはまたしても費用をかけて管理費等の支払を求める法的措置を採らなければならない状況に陥ることが予想されるのであるから、原告にとって、被告からの将来の管理費等の支払について、予め給付判決を得ておく必要が認められる。
将来請求分の終期としては、被告の上記滞納状況に照らし、被告が原告を脱退するまでとするのが相当である。

<東京地裁平成15年12月26日>

…被告は昭和61年9月26日に本件建物の所有権を取得した後、直ちに本件マンションの管理費等を滞納し始め、昭和62年5月から平成4年12月にかけて合計5万1200円を支払ったのみで、その後は10年以上の長期にわたり、原告からの再三の請求にもかかわらず一切の支払をしていないこと、その間の平成7年には…原告からの管理費等の請求を認諾しておきながらその後全く支払いをしないことなどの事実が認められ、これらの事情に照らせば、被告が今後も管理費等を支払わない可能性が高いといわざるを得ない。
したがって、原告にとって、被告からの将来の各支払期における管理費等の支払について、予め給付判決を得ておく必要が認められる。
…なお、将来請求分の終期としては、被告の上記滞納状況に照らし、被告が本件建物の所有権を喪失するまでと解するのが相当である。
また、原告としては上記内容の将来給付判決を予め得られることにより、将来の管理費等につき被告が各支払期に支払わないときには直ちに強制執行することが可能になるのであるから、将来の各支払期経過後の遅延損害金についてまで予め債務名義を取得しておくべき必要性は認められず、訴えの利益が欠けるというべきである。

東京地方裁判所平成17年12月20日

被告Y1の管理費等の支払義務は継続的に月々確実に発生するものであること、被告Y1は不動産業者であること、被告Y1の管理費等の負担額は本件マンション全体の管理費等の総合計額の8%程度の額を占め、被告Y1の管理費等の滞納によって、原告はその運営や財政に相当程度の支障を来すおそれがあることが認められ、また、本件において、被告Y1は、口頭弁論終結まで2回にわたる本件口頭弁論期日にも出頭せず、この間、平成17年8月分から同年11月分までの4か月分の管理費等の支払をも怠っていることからすれば、被告Y1は今後も滞納管理費等を支払う意思がないということができ、原告には、あらかじめその請求をする必要があるということができる。[請求できる期間は被告が所有者でなくなるまでの間とされています。]

<東京地方裁判所平成18 年12月25日>

控訴人は、平成8年11月分から平成13年9月分までの管理費等の任意の支払を怠り、被控訴人からその支払(その後一定期間の将来請求を含む)を求める訴訟を提起され、本件とほぼ同様の主張をして争ったものの敗訴したことが認められ、さらに本件訴訟において本件請求に係る管理費等を支払ったとは認められない…にもかかわらず、種々の主張をしてその支払義務を争っていることからすると、控訴人の支払拒絶の意思は明確であるというべきである。よって、将来分の管理費等の支払について控訴人の任意履行は期待できないというべきであり、「あらかじめその請求をする必要がある場合」に当たると認められる。[請求できる期間は判決が確定する日までとされています。]