理事会に理事の代理人を出席させることができますか

理事は、総会で選任され(区分所有法49条8項・25条1項、標準管理規約35条2項)、法令・規約・使用細則等・総会・理事会の決議に従い、組合員のため、誠実にその職務を遂行する必要があります(標準管理規約37条1項)。

そのため、理事によって構成される理事会(標準管理規約51条1項)には、理事本人が出席して議論に参加し、議決権を行使しなければならないのが原則です。

標準管理規約53条関係コメントでは、以下のようにされています。

① 理事は、総会で選任され、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとされている。
このため、理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる。

② したがって、理事の代理出席(議決権の代理行使を含む。以下同じ。)を、規約において認める旨の明文の規定がない場合に認めることは適当でない。


もっとも、実際問題として、代理出席を認めなければ理事会の開催が困難な場合もあり、代理出席を認める必要もあります。


そこで、やむを得ない理由がある場合に、一定の範囲の者に限って代理人を出席させることもできると考えられます。

この点、区分所有法47条2項の管理組合法人の規約中、理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、その理事を代理して理事会に出席させることができる旨を定めた条項は、違法でないとした裁判例があります(最高裁平成2年11月26日)。

▶最高裁平成2年11月26日

法人の意思決定のための内部的会議体における出席及び議決権の行使が代理に親しむかどうかについては、当該法人において当該会議体が設置された趣旨、当該会議体に委任された事務の内容に照らして、その代理が法人の理事に対する委任の本旨に背馳するものでないかどうかによって決すべきものである。
これを、管理組合についてみるに、法によれば、管理組合の事務は集会の決議によることが原則とされ、区分所有権の内容に影響を及ぼす事項は規約又は集会決議によって定めるべき事項とされ、規約で理事又はその他の役員に委任し得る事項は限定されており(法52条1項)、複数の理事が存する場合には過半数によって決する旨の民法52条2項の規定が準用されている。
しかし、複数の理事を置くか否か、代表権のない理事を置くか否か(法49条4項)、複数の理事を置いた場合の意思決定を理事会によって行うか否か、更には、理事会を設けた場合の出席の要否及び議決権の行使の方法について、法は、これを自治的規範である規約に委ねているものと解するのが相当である。
すなわち、規約において、代表権を有する理事を定め、その事務の執行を補佐、監督するために代表権のない理事を定め、これらの者による理事会を設けることも、理事会における出席及び議決権の行使について代理の可否、その要件及び被選任者の範囲を定めることも、可能というべきである。
そして、本件条項は、理事会への出席のみならず、理事会での議決権の行使の代理を許すことを定めたものと解されるが、理事に事故がある場合に限定して、被選任者の範囲を理事の配偶者又は一親等の親族に限って、当該理事の選任に基づいて、理事会への代理出席を認めるものであるから、この条項が管理組合の理事への信任関係を害するものということはできない。

標準管理規約51条関係コメントでは、以下のようにされています。


③ 「理事に事故があり、理事会に出席できない場合は、その配偶者又は一親等の親族(理事が、組合員である法人の職務命令により理事となった者である場合は、法人が推挙する者)に限り、代理出席を認める」旨を定める規約の規定は有効であると解されるが、あくまで、やむを得ない場合の代理出席を認めるものであることに留意が必要である。
この場合においても、あらかじめ、総会において、それぞれの理事ごとに、理事の職務を代理するにふさわしい資質・能力を有するか否かを審議の上、その職務を代理する者を定めておくことが望ましい。
なお、外部専門家など当人の個人的資質や能力等に着目して選任されている理事については、代理出席を認めることは適当でない。

④ 理事がやむを得ず欠席する場合には、代理出席によるのではなく、事前に議決権行使書又は意見を記載した書面を出せるようにすることが考えられる。
これを認める場合には、理事会に出席できない理事が、あらかじめ通知された事項について、書面をもって表決することを認める旨を、規約の明文の規定で定めることが必要である。

⑤ 理事会に出席できない理事について、インターネット技術によるテレビ会議等での理事会参加や議決権行使を認める旨を、規約において定めることも考えられる。

なお、理事本人が出席しない状態が日常化するような場合、外部の専門家を選任することなども含めて、理事の資格の見直しを検討することも必要であると考えられます。