滞納管理費に加えて弁護士費用も請求できますか

滞納管理費を請求する際に、滞納管理費を請求するための弁護士費用を請求することもできます。

管理規約に定めがある場合とない場合に分けて説明します。

条文の番号は特に断りのない限り区分所有法のもの、「規約」は標準管理規約単棟型を意味します。

管理規約に定めがある場合

管理規約に弁護士費用を請求できるとの規定がある場合、管理費を請求するための弁護士費用を請求することもできます。

標準管理規約も、違約金としての弁護士費用・督促・聴衆の費用を請求できるとしていますが(規約60条2項)、むしろ請求しないことに合理的事情がある場合を除き、請求すべきとしています(規約60条関係のコメント⑥)。

この点、滞納管理費などに対する遅延損害金の合計額473万6937円を経済的利益として、着手金32万6846円、報酬金65万3693円(合計98万0539円)を算出し(弁護士会の旧報酬基準に準拠した報酬基準)、これに消費税を加算した弁護士費用(102万9565円)を認めた裁判例があります(東京高裁平成26年4月16日)。

この事案では、違約金としての弁護士費用は、管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用であるとして、判決の時点ではまだ実現していない成功報酬の部分まで認められました。

また、この事案では、裁判所が「違約金としての弁護士費用」は「管理組合が負担することになる一切の弁護士費用(違約金)」と定めるのが望ましいとしていることも参考になります。

▶東京高裁平成26年4月16日

…標準管理規約…は、管理費等の徴収について、組合員が期日までに納付すべき金額を納付しない場合に、管理組合が、未払金額について、「違約金としての弁護士費用」を加算して、その組合員に請求することができると定めているところ、本件管理規約もこれに依拠する…。
そして、違約金とは、一般に契約を締結する場合において、契約に違反したときに、債務者が一定の金員を債権者に支払う旨を約束し、それにより支払われるものである。
債務不履行に基づく損害賠償請求をする際の弁護士費用については、その性質上、相手方に請求できないと解されるから、管理組合が区分所有者に対し、滞納管理費等を訴訟上請求し、それが認められた場合であっても、管理組合にとって、所要の弁護士費用や手続費用が持ち出しになってしまう事態が生じ得る。
しかし、それは区分所有者は当然に負担すべき管理費等の支払義務を怠っているのに対し、管理組合は、その当然の義務の履行を求めているにすぎないことを考えると、衡平の観点からは問題である。
そこで、本件管理規約…により、本件のような場合について、弁護士費用を違約金として請求することができるように定めているのである。
このような定めは合理的なものであり、違約金の性格は違約罰(制裁金)と解するのが相当である。
したがって、違約金としての弁護士費用は、上記の趣旨からして、管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解される(その趣旨を一義的に明確にするためには、管理規約の文言も「違約金としての弁護士費用」を「管理組合が負担することになる一切の弁護士費用(違約金)」と定めるのが望ましいといえよう。)。

管理規約に定めがない場合

管理規約に弁護士費用を請求できるとの規定がない場合、管理費を請求する弁護士費用は原則として請求できません(最高裁昭和48年10月11日)。

▶最高裁昭和48年10月11日

民法419条によれば、金銭を目的とする債務の履行遅滞による損害賠償の額は、法律に別段の定めがある場合を除き、約定または法定の利率により、債務者はその損害の証明をする必要がないとされているが、その反面として、たとえそれ以上の損害が生じたことを立証しても、その賠償を請求することはできないものというべく、したがって、債権者は、金銭債務の不履行による損害賠償として、債務者に対し弁護士費用その他の取立費用を請求することはできない…。

また、管理規約に弁護士費用を請求できるとの規定がない場合、弁護士費用を相手方に負担させる集会の決議をしても、弁護士費用の請求を認めなかった裁判例があります(東京高裁平成7年6月14日)。

もっとも、管理費の滞納により、訴訟の提起を余儀なくされたことが不法行為にあたり、不法行為に基づく損害賠償の弁護士費用が認められる余地はあります(東京地裁平成4年3月16日)。

▶東京高裁平成7年6月14日

…債権者は債務者に対し、金銭債務の不履行に基づく損害賠償として、弁護士費用その他の取立費用を請求することができないと解されている…ところ、本件訴訟は、金銭債務の不履行の場合に該当するので、被控訴人は、控訴人に対し、債務不履行に基づく損害賠償として弁護士費用相当額を…請求することはできない。

…区分所有法18条1項本文は、共用部分の管理に関する事項は、同法17条の場合を除いて、集会の決議で決するものと規定しているところ、管理費等の支払に関する事項が共用部分の管理に関する事項に当たることは明らかであるから、管理費等の取立訴訟を提起するために必要な弁護士費用の負担に関する事項もまた、共用部分の管理に関する事項に当たるものということができる。
ところで、共用部分の管理に関する事項に当たる場合にも、集会で決議することのできる内容には自ずから一定の制限があると解される。
すなわち、例えば、特定の組合員に対して、その意に反して一方的に義務なき負担を課し、あるいは、他の組合員に比して不公正な負担を課するような決議は、集会が決議できる範囲を超えたものとして無効というべきである。

…これを本件についてみると、控訴人は、被控訴人に対し、債務不履行に基づき弁護士費用相当額の損害賠償の支払義務を負うものでないことは前記のとおりであるし、また、現行法のもとでは、控訴人は訴訟の相手方の負担した弁護士費用そのものの支払義務を負うものではないので、本件決議は、右に説示したところによれば、控訴人に対し、その意に反して一方的に義務なき負担を課し、あるいは、他の組合員に比して不公正な負担を課するものであり、無効というべきである。

…そうすると、本件決議に基づき弁護士費用相当額の支払を求める被控訴人の請求は理由がなく棄却すべきである。

なお、この事案において裁判所は、以下のように、再三の請求にも関わらず支払いを拒んだために、訴訟を提起せざるを得なかったことを不法行為として弁護士費用を請求することについては否定していません。

…被控訴人は、控訴人が再三の請求にもかかわらず理由なしに支払を拒んだため、本件訴えの提起をせざるを得なくなったものとして、本件決議の有効性を主張するところ、仮にその主張のような事実があったとしても、控訴人のそのような行為を被控訴人に対する不法行為とし、民法419条の規定による損害賠償とは別に、弁護士費用の賠償を求めることがあり得ることは別として、本件のように区分所有者の集会の決議により、弁護士費用の負担を課すことは、相手方(控訴人)の承諾若しくはこれに準ずべき特段の事情の存在しない限り、許されないというべきである。

▶東京地裁平成4年3月16日

…控訴人は、営繕維持積立金及び給水管工事の負担金が建物の占有面積の割合で定められることを不合理と考え、独自の見解に基づいて、管理組合総会の決議により適法に定められた営繕維持積立金及び給水管工事の負担金の一部を支払わず、被控訴人が話し合いに応じるよう説得してもこれを一年半にわたり無視し続け、かえって管理組合に対し訴訟提起を挑発するような言動をし、被控訴人が弁護士に依頼して本件訴訟を提起せざるを得なくしたことが認められる。
控訴人の右行為は管理組合及びその管理者たる被控訴人に対する不法行為を構成するというべきである。
…そして、右不法行為と因果関係のある弁護士費用としては金3万円が相当である。

管理規約の定めが訴え提起後に新設された場合

滞納管理費を請求する訴訟を提起する際に、弁護士費用を請求できるとの管理規約がなかったものの、訴訟を提起した後に、弁護士費用を請求できるとの管理規約を新設した場合、弁護士費用の請求を認めた裁判例があります(東京地裁平成24年5月29日)。

▶東京地裁平成24年5月29日

原告は、平成23年5月28日開催の定期総会において管理規約を改正し、管理費等を滞納した場合には、その組合員(区分所有者)に対し、違約金として弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して請求できるとの規定…を設け、同規定は同年6月1日から効力を生じている。
ところで、原告が管理規約…に基づいて弁護士費用の支払を請求しているのに対し、被告らは、管理規約…は、本件訴訟提起後に新設されたものであるから、本件訴訟において、原告が被告らに弁護士費用等を請求する根拠とすることはできないと主張しているが、民事訴訟においては口頭弁論終結時における権利ないし法律関係の存否を判断するものであるから請求根拠は口頭弁論終結時に存在すれば足りると解するのが相当であり、被告らの主張は採用できない。
…弁論の全趣旨によれば、①原告は、本件訴訟の遂行を原告代理人らに委任し、原告代理人らに対し、以前の日本弁護士連合会弁護士報酬基準と同じ報酬基準に基づいて報酬を支払うことを約束したこと、②同報酬基準によれば、着手金は請求金額の5%と9万円であり、成功報酬は請求金額の10%と18万円であることが認められる。
そして、原告は、報酬金額算定の基礎となる請求金額は、訴状に代わる準備書面の請求金額である361万4678円(未払管理費115万7460円、未払修繕積立金107万5200円、未払電気水道料金38万6732円、確定遅延損害金99万5286円)とするのが相当であるから、同金額を採用すると、①着手金は請求金額の5%と9万円であるから27万0733円であり、これに消費税5%を加算した28万4269円となり、②成功報酬は請求金額の10%と18万円であるから54万1467円であり、これに消費税5%を加算した56万8540円となる(合計85万2809円)。
…以上によれば、原告が被告らに対して請求できる弁護士費用は85万2809円であると認めるのが相当であり、…原告の主張は理由がある。